住生活用品業界の動きを伝える月刊紙 LIVING-BIZ

月刊リビング・ビジネス

お客の喜びの声が支えに

お客の喜びの声が支えに

山口夫妻
山口夫妻

 

地域に密着し、「体力の続く限り、お客さまに合った最適な布団作りを続ける」とする山口ふとん店の歴史は長い。

 昭和の初めより、リヤカーを引いて町内を回り、ぺちゃんこの布団を預かり、仕立て直すという「わた屋」を営んできた。家庭でも布団を作る時代で、玉わたも商品になる。綸子や緞子を使った豪華な婚礼寝具を作り、かつての「紫布団ブーム」も経験し、当時は多忙を極めた。

 やがて、工場で生産される既成布団が出てくるようになると、布団の打ち直しも次第に減少してきたが、同時にわた打ち業者も減少したこともあり、工場を建て替えた同店は再び忙しい日々が続いた。

 21歳で嫁いできた山口清子さんは、何も知らなかった布団の作り方から猛勉強、次第にわたの魅力に取りつかれるようになり、夫の憲一郎さんと二人三脚で手作り布団一筋に歩むことになる。

 しかし、決して順風満帆ではなかった。昭和から平成に代わるころ、憲一郎さんの目に原綿を縛っている番線が当たり、失明寸前の大けがをし、しばらくは清子さん一人奮闘の日が続く。悪いことは続くもので、健康には自信があったはずの清子さんに乳がんの宣告。49歳のときだった。

 全力で仕事と家庭に打ち込んでいたさなかの挫折感。手術を決意し、しばらく体を休めたものの、ハサミを持つ手はしびれる。そんな折り「赤ん坊のために木綿の布団が欲しい」「既製品の布団が寝にくいので作り直してほしい」などと、客の要望は続く。

 手術前のように滑らかな動きはできないまでも、ひたすら客の要望に応え、喜びの声を聞くにつれ、それが自信と原動力になってきた。こうして一生懸命、試行錯誤をしながら客に尽くしてきた結果が、昨年秋の清子さんの黄綬褒章受章だ。これまでの苦労が報われた瞬間だった。

 布団を仕立てる寝具店が減ってきているこの時代、「今後も手作りだからできる細かなオーダーにしっかりと対応できる店」でありたいと願っている。さらに、天然繊維による昔ながらの手作りと、技術の結晶である機能繊維の組み合せなど、客のための布団づくりを続け、後世に継いでいきたいという。

今日も布団の手作りに追われる
今日も布団の手作りに追われる

■山口ふとん店

住所=〒440-0837 愛知県豊橋市三ノ輪町本興寺1-12

電話=0532(61)2522

ページトップへ戻る